動物園のライオン観察(20150921)

ある日男は、動物園へ出掛けた。item05

平日の朝一番ということもあり、

開園を待っているのは、赤白帽子を被った

沢山の保育園児と保護者だけだった。

開園となり、園児たちが最初の象コーナーへと走って行ったのを尻目に

「ライオンを見に行こっ」とサファリエリアへと向かった。

途中誰とも会わず、ライオンの檻の前までやって来た。

奥のほうに数頭のライオンが寝そべってるのが見えた。

その中から一頭のメスライオンが男へ向かってやって来た。

近づいてくるライオンの眼に、男は見覚えがあった。

その眼はテレビでよく観たヌーとかシマウマを狙っている時と同じ眼だった。

そしてその姿は、テレビでよく観た獲物を狙って近づいて行く姿そのものだっだ。

男は危険を感じ、逃げようと思っているのになぜか動けず、

目をそらすこともできないでいた。

テレビの前でポテトチップスを食べながら「なんで捕まっちゃうのかな、

見えてるんだからすぐ逃げれば助かったのに」なんて思っていた自分が

ヌーと同じ立場(ヌーとライオンの間に檻はないけど)に立たされたとき、

今の自分はあの時のヌーとまったく同じなんだ。という事に気付いた。

(ごめんね、ヌー)

近づいてくるライオンと睨みあったまま(睨んでいるのはライオンだけだけど)

檻があることを(当たり前だが)確認しつつ、後ずさりながら

なんとかその場から、じわじわオロオロと離れることに成功した。

「あー、怖かった・・・・・・」

一息ついたところで、男にはある疑問が沸いてきた。

今まで数え切れないほど、動物園のライオンを近くで観てきた。

しかし今日のように檻に入ったライオンを恐れるなんて

感情を持ったことは一度もなかった。

過去のシチュエーションを思い返していた男が、

過去と今日との違いがひとつだけあることに気付いた時、

男はその場でまた別の意味の恐怖を感じたのだった。

今までと違って、今日は男の周りに誰もいなかった。

ライオンからみたら、自分ひとりきりだった。

もしあの場面で男の周りに赤白帽子が沢山いたとしたら・・・

男は恐怖なんて感じなかっただろう。

それはなぜか?

なぜ草食動物は群れているのか?

そうなのだ、「自分が標的になることはない」という安心感を得るため、

他を犠牲にし、自分が助かるために群れているのだ。

そうしなければ食物連鎖の中で生きていけない。

立ち向かうことも、逃げることもできないのなら、、

赤白帽子の犠牲がなければ生きていけない。

男は潜在意識の中に食物連鎖の底辺を見た気がした。

人(男)はライオンの前では無力な草食動物なのだ。

色んな意味で貴重な体験をさせてもらった今日の動物園に感謝したい。

「ありがとう、動物園」

「今度は人が沢山いる時にライオン、見に来よっと」

 

 

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