あんドーナツの常連さん観察(その1)20160731

ある日男はパン屋さんへパンを買いに出掛けた。

男はフォカッチャ(バジルソースとトマト)をひとつ選ぶと、あとひとつ何にしようか店内で決めかねていた。

そのとき、そのパン屋さんの客層ではない客がトレイとトングを掴んだのが目に入ったが、あとひとつを決められない男は、とりあえず3番目の客としてレジに並んだ。

男は順番を待っている間、「あとひとつ何か食べたいなあ。」と店内を見渡しながら後ろのパンに目をやったとき、すでにあの客が男の後ろに並んでいた。

男が何気なくその客のトレイに目をやると、2つのアンドーナツが鎮座していた。

パン屋さんに入ってからわずかな時間、彼に迷いはなく、ほかのパンには見向きもせず、アンドーナツの陳列棚へ最短ルートで進み、アンドーナツをふたつ掴んで男の後ろに並んだのだ。(まさか、常連さん!?・・)

前の客に振り返られ、自分の買ったパンを凝視されるのはかなり嫌な気分だと思うが、男は後ろの客のアンドーナツから目が離せなくなっていた。

そうなのだ。男があとひとつ食べたいと思っていたパンはアンドーナツだったのだ。

健康と言う名のもとに糖質と油を組み合わせたパンを無意識のうちに避けてきた男は、自分の本当の気持ちに気付かされた。

そして男は客の後ろにあるアンドーナツの棚へ手(トング)を伸ばし、自分のトレイにアンドーナツをひとつ乗せた。

そして小声で「これ、うまいんだよな・・・」と呟いた男の独り言に、後ろの客が「おいしいんだよね、これ。中にあんこが入っていて。」と弾んだ声で答えてくれたが、そのとき男は黙ってうなずくことしかできなかった。

本当は何を選びたいのか心の中でわかっている自分を裏切り、揚げパン系のツイストドーナツとか好きなパンを見て見ぬふりをしてレジに並んだ男にとって、後ろの客のアンドーナツだけが乗っているトレイは男に好きなパンを買う勇気を与えるのに十分だった。

背中を押してくれてありがとう。

前に並んでいた変な客の独り言に笑顔でこたえてくれてありがとう。

店に似合わない客だなんて思ってすみません。

アンドーナツの常連さんのおかげで本当に食べたいパンを食べることができました。

アンドーナツはとてもとてもおいしかったです。

いつかパン屋さんでまた会う時があったら、男のトレイにはアンドーナツが乗っていると思います。

そのときはアンドーナツ好きな者同士として、男のほうから「これうまいよね」と話しかけますね。

でも、常連さんのお昼ごはんが毎日アンドーナツふたつだとしたら、おいしいけれども健康には気を付けてください。

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庭の自作バードフィーダー1号(改々)・2号・3号・4号撤退編(20160308)

11月28日からスタートした庭の自作バードフィーダーですが、あたたかくなってきたので今日で店じまいとなります。

1号(改々)は解体され、今度の冬が来るまで物置の中で夏眠(?)です。

次に組み立てる時がやって来たら、大きく開いてしまった隙間を木の枝で塞ぐことにします。

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2号の土台と陶器は、冬のあいだ庭で風雨にさらしておいた他の流木たちと一緒に、ビオトープの中に沈んで住人たちの隠れ場所になります。

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3号と4号は庭のオブジェ?として木にぶらさがったりして、次の出番を待ちます。

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5号は水飲み場として残そうと考えています。

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訪問してくれた鳥たち、どうもありがとう。

最初は警戒していたけれども、最後はみんな常連さんでした。

また冬がやってきて、ここを思い出したら、訪れてみてください。

店を開けて待っていますから。

 

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みんな、元気で!!!

 

 

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食堂の常連さん観察(その3)(20160211)

10年前、たまに食べに行っていた商店街から外れたところにある、

おばあさんとおじいさんがやっている食堂の

焼きそばとおでんが急に食べたくなった。(・・・のが不思議だが・・・

・・・なので)、ある日の晴れた午後、男は10年ぶりに食堂へ出掛けた。

自宅と繋がっているその食堂は、10年前と同じ場所にまだ残っていた。

引き戸の扉を開けると入って左側の鉄板で

10年前と同じおばあさんAが焼きそばを焼いていた。

10年前もおばあさんだったのに、10年経ってもおばあさんだった。

お客の接待をしていたおじいさんが、おばあさんBに

変わっていたこと以外、あの時となにも変わっていなかった。

お客さんはまず、席を確保してやきそばを注文したあと、

入口近くに設置してある1個85円均一のおでんをセルフでお皿に取り、

おばあさんBに自己申告して、自席でおでんを食べながら

やきそばのできあがりを待つというシステムも変わっていない。

(そんなシステムになっていないかもしれないけど・・・・)

今日はおでん鍋の前に先客がいた。

台の上に設置されているおでん鍋からおでんを取るには

少し背が足りない女の子が、背伸びをしながらおでんを選んでいる。

しかし、中身が良く見えていないからなのか、

長い菜箸をうまく使いこなせていないからなのか、

中々お目当ての獲物を捕獲できずにいた。

(何が目当てなのだろうか??)

捕獲に必要な3つの神器(菜箸、お玉、穴の開いたお玉)は

1セットしかないため、男は女の子の捕獲完了を待つしかなかった。

やっと昆布を菜箸でつかんだように見えたが、

皿に移す際、逃げられてしまった!

(土間に落としてしまった!とも言う)

しかし逃がした獲物には目もくれず、

女の子は次の獲物をさぐり始めていた。

そんなこんなでつつかれたり、つかみそこなったりされた

獲物たちがみるみる傷だらけになっていく。

ここに来たら絶対食べようと思っていた鳥皮串だったが、

つつかれて串から外れた鳥皮が、おでんの湖底に深く沈んでいく・・・

おでんがぐちゃぐちゃになって行く中、

まだまだ時間がかかりそうな雰囲気なので、自席に戻って

気を取り直し、出された番茶を飲みながら出番を待つことにした。

客は、平日の昼間のTVを見ながら、

やきそばとおでんをつついているひと組みのカップルと、

おでんと格闘を続けている女の子しかおらず、

静かに時間が過ぎていく。

しばらくすると後ろから声が聞こえてきた。

「○○ちゃん、もういいの?」「からしは?」「またね」

簡単なやり取りのあと、

小さな常連さんは戦利品を手にして、満足げに帰って行った。

やっと男に順番が回ってきたのだが、

男が狙っていた厚揚げはどこを探しても行方がわからす、

鳥皮串もまた、あきらめざるを得ない状態になっていた・・・。

これ以上の捜索は困難と判断し、眼の前に浮かんでいる

がんもどきとはんぺんと大根を選択した男は、

おばあさんBに戦利品を申告し、大根から食べ始めた。

描いてきた目標と違ったが、10年前の味がよみがえる。

おでんを食べていると、やきそばができあがってきた。

やきそばの味もおでんの味も「絶品」とか「格別」というわけでもない。

なのに男はなぜ、急に食べたいと思ったのか・・・・・・・・・・

きっとあの常連さんを咎めない、あの時間と空間を味わいたくて

男はやってきたのだ。と思った。

また来よう!

そして今度こそ鳥皮串、食べられるかな?

 

 

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食堂の常連さん観察(その2)20151107

ある日男は、ときどき昼食を食べに行く食堂へ出掛けた。

その日男は、すきやき丼とごぼう天うどんを注文した。

食べている間に、「みつめ」と客の注文する声が聞こえてきた。

「みつめ?」

もちろんそんなメニューなんてどこにも見当たらない。

椅子の裏にだって書いてない(に決まっている・・)

しかし注文を受けた店主は何ごとも無く

「は~い、みつめ~!」

と、厨房に向かって例のダミ声で叫んだ。

「えっ、あるの?」

出てきたのは卵が3個の目玉焼き定食だった。

「なるほど!」

次の日男は注文を取りに来た店主に向かって

mitume「みつめ!」と注文した。

店主:「えっ?・・・・・・・・」

男: 「えっ?・・・・・・・・・・・・・・・」

男: 「え~と、目玉焼き定食ください・・・・」

店主:「は~い、めだま一丁!」

男のもとに運ばれてきた定食は

当然だが、卵が2個の目玉焼き定食だった。

男の常連への道はまだまだ続くのだ。(もう無理かも・・・・・・・)

 

 

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食堂の常連さん観察(その1)20151027

ある日、男は昼ごはんを食べにある食堂へ出掛けた。

その店は製麺所も兼ねているが、メニューは

今で言う、B級グルメがほとんどだ。

何回か通ったとき、「どんなめ」と客の注文する声が聞こえた。

「そんなメニュー無いよな・・」と男が思ったとき、

厨房に向かって「どんなめ、1丁!」と言う

店主の威勢の良いダミ声が店に響いた。

「えっ、あるの?・・・」 しばらくして運ばれてきたのは、

すきやき丼ぶりとなめこ汁という店にあるメニューだった。

「なるほど・・・!」

あくる日、男は注文を取りに来た店主に向かって「どんなめ!」と注文した。

店主 : 「えっ?・・・・・・・・・・」

男 : 「えっ?・・・・・・・・・・・・」

男 : 「・・・・え~と、すきやき丼ぶりとなめこ汁をください」

店主 : 「は~い、どんなめ、1丁!」

男 : 「えっ?・・・・・・・・・・・・」

常連への道は険しいのだ!

donname~

 

 

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